宝永4年(1707)に雲山道白居士により開基された。もとは三田(兵庫県有馬郡三輪町)の地にあり、三田藩主九鬼家の家臣の菩提寺として護持されていたといわれるが、水害により甚大な被害をうけ、現在の地に移転した。もともとこの地には普門庵があったが昭和4年(1929)9月に松山寺と改称された。
本尊は十一面観世音菩薩。寺に古くから伝わる西国三十三所の札所本尊と同様の観音像33体も祀られている。
心地よい静けさが溢れる
お寺の近くの畑から、うっすらと立ちのぼる朝霧。青空の下に満たされた澄んだ空気を胸いっぱい吸い込むと、それだけで「早起きしてよかった」という気持ちになります。
朝7時。
参禅者はおもむろに立ち上がると、回廊に一列に並びます。
「パンッ―― パンッ―― パンッ――」
東堂の平尾玄秀老師が力強く打ち鳴らす木版。その乾いた音が境内に響き渡ります。
薄暗い堂内に入ると、目に飛び込んでくる太く大きな柱。大自然が持つ迫力に満ちあふれ、まるで深山幽谷にいるかのよう。あとから「松」だと教えてもらいましたが、これほど大きな松の木には、そうはお目にかかれません。
全員が脚を組み姿勢を調え終わると、静けさがいっそう深くなります。「ごくり」と唾を飲み込むこともためらわれるような静寂です。耳に入るのは、一定のリズムで響く庭のシシオドシと鳥のさえずりのみ。