坐禅なんて…
「堅苦しくて難しい」、「足は痛いし大変そう」正直、坐禅というと、どうもそういったイメージが頭をよぎる私。しかし、そんな不届き者が、今回体験取材ということで、坐禅に初挑戦。「一体どんな体験だろう」そんな期待と共に、「坐禅をきちんと組めるだろうか」という不安で胸がいっぱいです。そんな私を、温かく出迎えて下さったのが、京都市山科区にある岩屋寺さんです。果たして、私は無事坐禅を組むことができるのでしょうか。
「堅苦しくて難しい」、「足は痛いし大変そう」正直、坐禅というと、どうもそういったイメージが頭をよぎる私。しかし、そんな不届き者が、今回体験取材ということで、坐禅に初挑戦。「一体どんな体験だろう」そんな期待と共に、「坐禅をきちんと組めるだろうか」という不安で胸がいっぱいです。そんな私を、温かく出迎えて下さったのが、京都市山科区にある岩屋寺さんです。果たして、私は無事坐禅を組むことができるのでしょうか。
岩屋寺は、西野山の山麓に位置するお寺です。山裾に向かって立ち並ぶ住宅街を抜けると、お寺に通じる石段が現れ、一気に静寂な雰囲気が辺りを包みます。境内を取り囲むのは雄大な自然で、大きな桜、銀杏、紅葉といった木々が茂り、四季の移ろいを感じさせてくれます。
またこの岩屋寺は、赤穂義士の大石内蔵助ゆかりの寺としても有名です。大石内蔵助は、隠棲地としてこの地に住み、吉良邸討ち入りの謀を密かに巡らしたと言われています。事成った後には、邸宅、田畑等一切を岩屋寺に寄進し、現在でもお寺には貴重な遺品が数多く残されています。
そんな歴史と自然に彩られたお寺は荘厳な佇まいで、遠くから目にするだけでも背筋が伸びるような感じがします。
緊張の面持ちで、ゆっくりと石段を登り山門をくぐると、まず目に入ってくるのは、ご本尊の不動明王が祀られた本堂。そしてその本堂の前脇にある毘沙門堂内には、赤穂義士四十七人の木像が納められています。
ご本尊に手を合わせ、石畳に沿って境内の奥へと足を進めていくと、今度は趣深い茶室が現れます。
この茶室は、大石邸が取り壊された後、その廃材を一部利用して建てられたもので、かつてこの地で計略を巡らせた義士達の息遣いが聞こえてくるような、そんな歴史を感じさせてくれます。
いよいよ、坐禅を組みます。
まず、庫裡にて坐禅の手ほどきを受けます。
「坐るという時間を大切にして欲しい」と言われたご住職の大須賀珠心さん。形式張らない柔らかな教え方で、緊張と不安でガチガチな私も、気持ちが軽くなりました。
そしていざ坐禅!坐禅を組むために案内されたのは、なんと先ほどの茶室です。こんな貴重な所で坐禅を組ませていただけると思うと、改めて身が引き締まる思いです。
深く息を吸って呼吸を調え、茶室に足を踏み入れます。そしてゆっくりと奥へと進み、坐蒲の前で一礼。おぼつかないながらも足を組んで、左右に体を揺らしながら姿勢を正します。静まりかえる部屋の中で、聞こえてくるのは木々のざわめきと鳥のさえずり。それは、慌ただしい日常から解き放ってくれる空間です。程なくして、坐禅開始の鐘の音が鳴り響きます。
視線をおとし、背筋を伸ばし、腹式呼吸。最初はその坐禅の形ばかり気になって、なかなか坐ることに集中できません。おまけに、後ろで警策を持って歩かれるのですから、次は自分が叩かれるのではないかと緊張が走り、体が強張ります。
しかしそれも束の間のこと。時間が経つにつれ、すっかり体も慣れて、静かに自分の呼吸を聞くことで、すぅっと坐禅の世界に引込まれていく感じがしました。
そして30分坐った後に「普勧坐禅儀」をお唱えします。お腹から声を出してお唱えするのですが、これが、なかなか難しい。こうして四苦八苦しながらも、鐘の合図とともに1時間あまりの坐禅は終了しました。
最初は「1時間もしんどいな〜」なんて思っていたのですが、実際に体験してみるとあっという間で、最後は心地よい足の痺れとともに、体がスッと軽くなったような、そんな感覚を味わうことができました。
坐禅をした後は、お茶がふるまわれ、和気藹々とした雰囲気で茶話会が開かれます。地域の方々が参加されていることもあり、話は大いに盛り上がり、あちこちで笑顔の花が咲きます。
坐禅に来られる理由をお伺いしたところ、「元気を頂ける」、「自由を見つめ直すことで生き方を考えさせられる」など様々でしたが、気楽に、ゆったりとした雰囲気で坐れることが、人々を惹きつける理由だと感じました。岩屋寺は、坐禅を通して自己を顧みる修行道場としてだけでなく、地域の親睦を深める交友の場としても活気づいており、とても素敵なお寺でした。
こうして、私の体験取材は、無事終了しました。最後に、坐禅に対する偏屈なイメージを持っていたことを反省せねばなりません。「坐禅=難解なもの」ではなく、それはとても身近で、一番シンプルに己と向き合える方法。この頂いたご縁に感謝しながら、今後はより坐禅に親しみ、精進していきたいと思います。
山号を神遊山(しんゆうざん)、寺号を岩屋寺(いわやじ)と称し、かつて天台宗に属したが現在は曹洞宗天寧寺の末寺である。
創建当時は隣接する山科神社の神宮寺であったといわれ、本堂に祀られている本尊の不動明王は智証大師円珍作で、大石良雄(内蔵助)の念持仏であったと伝わる。
赤穂城明け渡し後、良雄は岩屋寺付近に隠棲し仇討ち成った後、邸宅等を岩屋寺に寄進した。
後に荒廃したが、嘉永年間(1848〜1854)に堅譲尼が京都町奉行浅野長祚の寄進を受けて再興した。