曹洞宗の坐禅

曹洞宗の教えの根幹は坐禅にあります。それはお釈迦さまが坐禅の修行に精進され、悟りを開かれたことに由来するものです。禅とは物事の真実の姿、あり方を見極めて、これに正しく対応していく心のはたらきを調えることを指します。そして坐ることによって身体を安定させ、心を集中させることで身・息・心の調和をはかります。

曹洞宗の坐禅は「只管打坐(しかんたざ)」、ただひたすらに坐るということです。何か他に目的があってそれを達成する手段として坐禅をするのではありません。坐禅をする姿そのものが「仏の姿」であり、悟りの姿なのです。私たちは普段の生活の中で自分勝手な欲望や、物事の表面に振りまわされてしまいがちですが、坐禅においては様々な思惑や欲にとらわれないことが肝心です。

坐禅の基本(準備・基本作法など)

坐禅する場所
僧堂(そうどう)・坐禅堂

修行道場においては坐禅をする専用の建物があります。それを坐禅堂・禅堂(僧堂)といいます。
そもそも僧堂は修行僧が生活するための場所で、「起きて半畳、寝て一畳」という言葉がありますが、一人ひとり決まったスペースが与えられ、坐禅・食事・就寝のすべてをおこないます。僧堂のない寺院では本堂で坐禅を行なうことが多いです。

坐禅堂

一般のご家庭では、坐れるだけのスペースがあればどこでも坐禅できますが、できれば仏間など静かな部屋を使用できればベストです。きれいに清掃し、できれば線香や香を焚いて清浄にすると良いでしょう。

坐禅のときの服装

坐禅の際は、身体をしめつけないゆったりとした服装が好ましいです。特にジーンズやミニスカートなどは坐禅に適しません。一般のジャージや作務衣などが脚を組むときに無理がありません。靴下は履かず、裸足で行ってください。足がしめつけられて血行が悪くなります。

ネックレスなどの貴金属、アクセサリー、腕時計は身につけないようにします。警策をうけるときに邪魔になりますし、修行の際にそのように身を飾る必要はありません。

坐禅するときの手のかたち
合掌(がっしょう)

世界の仏教徒に共通の礼拝の作法です。手のひらを隙間の開かないようにピッタリとくっつけて、指先を伸ばします。指先の高さを鼻の位置ぐらいまで上げ、かるく脇を開きます。鼻先から合掌まで握りこぶしひとつ分ぐらい離してください。

叉手(しゃしゅ)

立っているときや歩くときの手の作法です。左手の親指を握りこみ、そのこぶしを右の手のひらでおおいます。肘をかるく開き、みぞおちのあたりに手をあてます。

法界定印(ほっかいじょういん)

坐っているときの手の作法で「ほっかいじょういん」といいます。
右のてのひらの上に左の手のひらを乗せて、両手の親指を自然にくっつけます。そのときにできる円がきれいな卵型になるようにしてください。
手はすわっている脚のつけねに自然に置き、お腹にくっつけます。浮かさないようにしましょう。

法界定印
道具など
文殊菩薩(もんじゅぼさつ)

僧堂の仏さまです。
僧の姿をした文殊菩薩なので、特に聖僧(しょうそう)さまとお呼びしています。坐禅会などでもその中心に祀られることがしばしばです。

文殊菩薩
坐蒲(ざふ)

坐禅の際におしりの下に敷く、丸いクッションのような形をしたものです。坐蒲でおしりの位置を高くし、両膝を床につけ、3点で身体を支えます。坐蒲は個人の体格により高さや柔らかさを調整すると良いでしょう。

一般の家庭で坐蒲のない場合は、座布団や適当なクッションで代用してください。

坐蒲
警策(きょうさく)

修行道場や参禅会などで、坐禅の指導などに使われる法具です。
坐禅中に居眠りをした場合や、姿勢が悪い人、気の緩みの見られる人を正します。

坐禅中に警策を受けたい時は、坐ったまま合掌をして待ちます。曹洞宗では警策で右肩を打ちますが、それは袈裟にあたるのを避けるためです。

警策
鐘(かね)

僧堂内での会話は厳禁です。ですから、坐禅の合図はすべて鐘の音で知らされます。坐禅開始の場合は鐘が3回鳴らされます。これを「止静三声」といいます。