今月の法話

いただきます

兵庫県 琴松寺 住職 平和宏昭 老師

ある小学校での出来事です。
給食の時間に『いただきます』を言わない児童が増えてきたので、「給食の時は『いただきます』を言って食べましょう」という『学校通信』を各家庭に配布しました。
すると、児童の親からクレームがあったのです。

「給食費を払っているのに『いただきます』と言わせるのはなにごとか」
「そんな失礼なことをいわせないでください」
という親が出てきたのです。

『いただきます』という感謝の言葉の意味を無料で何かをもらったお礼の意味と勘違いしているのではないでしょうか。
『いただきます』と手を合わせて食べるのは、自分を生かしてくれる食べ物、そしてそれをつくってくれた人、さらに口に入るようにこしらえてくれた人、それぞれに対する感謝の気持ちの表現です。

あなたは、朝はパン食ですか?それともご飯ですか?
何れにしましても、朝は「朝ご飯」と言いますね。昼は「昼ご飯」です。
さて、夜は何と言われますか?「夕ご飯」それとも「晩ご飯」ですか。
最近の若い人は「夜ご飯」と言うそうです。
「夕ご飯」は、一家団欒の食事ですが、昔の話です。
1人さみしく電子レンジでチンして食べるのが世間の常識だそうです。
夜遅くまで働く人は、「夜ご飯」族と言うそうですね。
驚いたことに、この「夜ご飯」という言葉、外国の日本語の教科書に載っています。

栄養士さんに
「最近、食事の感覚がおかしくなっていますね」
と話しかけますと、
「おかしいと思われるうちは、正常なんですよ」
と言われました。

家族そろって食事をするよう心掛けましょう。コミュニケーションを計る場としての機能がありますし、一つのお皿に盛られた料理を分け合って食べることから、譲り合いや思いやりの心が身に付いていきます。
『いただきます』と手を合わせ、感謝する姿勢が、食べたものを栄養にするのです。
食事の時に手を合わせ「いただきます」「ごちそうさま」と言う習慣を身につけたいですね。
『いただきます』は感謝の心を表現する言葉です。

2015/06/16