過去の法話

喜びの心

兵庫県 最明寺住職 大槻覚心 老師

道元禅師の書かれた料理をする人の心得には、料理人が持つべき三つの心が述べられています。
その一つは、料理をする人はいつも喜んで料理をすべきで、嫌々してはいけないということです。このことは、料理に限らず何をするにもとても大切なことだと思います。

私の友人に和尚さんがいます。和尚さんの奥さんが入院され、それまでなさっていたお寺の用事のほかに、洗濯や受験生の子どもの世話まで和尚さんがしなければならなくなりました。
最初のころ、傍の目にも気の毒なほど忙しげで苦しそうにしておられましたので、病気にでもなられては大変だと思っていました。
数週間してまたお出会いしてみると、別人のようにお元気に、甲斐甲斐しく働いておられます。私は思わず「心境の変化でもありましたか?」とお尋ねいたしました。
「やはり人間は心の持ち方でずいぶん違うものですね。家内が病気になった当初は炊事や洗濯を嫌々していたのですね。そんな心ではつい手を抜いてしまってまともなことができませんでした。子どもにもまで文句をいわれまして、ますます落ち込んでしまいましてね。そんな時、喜びの心で料理せよとの道元さまの言葉を思いだしました。それから出来るだけ何事も喜んで取り組もうとしています」
「それはいいことを思い出されました」といいますと、
「何事も喜んでできれば、受身ではなく主体的に取り組めますから不思議と疲れませんし、いいアイデアも浮かんできて能率もあがります。何事もとりかかかる時、多少イヤだと思えるときでも、どうせしなければならないことなら喜んでしようとつとめていますと、そのうちに無理に喜んでしなくても、自然に喜びの心で出来るようになりますから不思議です。傍の者もその方が、気持ちが良いらしく、よく声をかけてくれるようになりましてね」 と、いわれました。

皆様方もぜひ今のつとめを喜びの心でできるようにつとめてみてください。

2007/03/26