禅のお話
過去の法話
報恩
修証議の中に、
おおよそ因果の道理暦然として私なし、造悪の者はおち修善の者はのぼる
と書かれています。
仏教は因果応報の教えを説きます。
お釈迦さまは「善因善果 悪因悪果」とお示しです。いいことをすればいい結果が得られ、悪いことをすれば悪い結果になると。
このことは道徳の世界でも教えていることですが、仏教ではこの先が大事なのです。
因も大切ですが、もっと大事なものとして縁を説きます。
善因は縁がととのったときはじめて善果を結ぶのです。
たとえば、今年は豊作だ。いや今年は凶作だと毎年作物の収穫量は違います。また味も違います。種を蒔くだけでは、作物は収穫できません。
土作り、肥料や水をやり、適温がないと発芽しません。
種だけの因だけでなく諸々の縁によって収穫ができるのです。
因縁生起という言葉がありますが、略して縁起といいます。これは因よりも縁を重視するので縁起と略するのであります。
日常、物事がうまく運んだときや、成功したときに自分の努力だと考えていませんか。立派な大学に入学した、立派な会社に就職ができた。人生の成功は自分によるものだと、それは間違いではありませんが、直接的な因だけを見ているのです。
成功の裏には間接的な縁、多くの人々の協力があったことを忘れてはいけません。
造悪の者はおち、修善の者はのぼるとは、悪を造る者がおちるだけではありません。報恩感謝することを教えているのです。報恩の恩の字は因に心と書きます。
お釈迦さまをはじめ、永平寺をお開きになられた道元さまはその心を大切にしているのです。もちろん皆様もそうなのですね。