過去の法話

生活のマナー

兵庫県 琴松寺住職 平和宏昭 老師

電車に乗ってお参りに出かけた時のことです。私の向かいの席に、若い女性が座りました。

電車が発車するとすぐにコンパクトを開き、しげしげと顔を眺めながら、口紅を塗り化粧をしはじめたのです。目のやり場がなく、あたりを見回しますと、若者は携帯電話でメールやゲームに夢中です。電車のアナウンスで「携帯電話の電源はお切りください」と放送されているのに聞こえないのでしょうか。マナーが大変悪くなってきましたね。
川柳に

助手席の 化粧しながら 共稼ぎ
という句がありますが、最近は、夜型が増えて、朝、遅くまで寝ているために、朝御飯も食べずにおつとめにでかけたり、学校に行くにも朝御飯を食べてこない子供が増えているようですが、寝ている間にも脳は働いていて栄養分を吸収しています。

朝、目覚めますと、さらに脳は活発に働き出しますので、養分を補給しなくてはなりません。朝食は大事なエネルギーの元です。

朝、少し早く起きさえすれば、朝食もとり、我が家でお化粧もすませ出かけられるのではないでしょうか。

道元禅師は、修行は坐禅だけではなく、起床・洗面・食事・掃除・睡眠のあらゆる日常の行いが仏道修行であると考え、御飯の食べ方やトイレの使い方など、その一つ一つについて規則を定め、それに従って生活するよう事細かに示されています。

お盆の出来事です。
四年生と五年生の男のお孫さんをつれて、お墓参りされたお婆さんは、玄関で挨拶をすまされますと、お孫さんを座らせ、
「きれいに足を拭いて上がりなさい」
と自分のぬらしたタオルを渡していました。そして、位牌堂に向かわれる時
「敷居や畳の縁を踏んではいけませんよ」
と教えておられました。

少し前の日本では、よく見られた光景です。 家庭での行儀や作法、生活上のルールをつくり規範ある家族生活を営み正しいマナーを身につけたいです。

2005/02/09