過去の法話

平和への祈り

兵庫県 最明寺住職 大槻覚心 老師

昨年、サッカーのワールドカップの日韓両国での開催は大変な盛況でした。
その閉会式で何万羽もの折り鶴が大空に飛ばされたことを記憶に留めておられるでしょうか?
私はあの折り鶴を見て世界の平和への願いが折り鶴に託して発信されているのだと感じました。

昨年の夏、ある研修で広島の平和公園を訪れました。その時、小学生が大勢「金の折り鶴を持つ少女」の像の前に集まり先生から次のようなお話を聞いていました。

佐々木貞子ちゃんは2歳の時に被爆しましたが、12歳まではとても元気でリレーの選手に選ばれるほど活発な少女でした。ところが、12歳の時に被爆の後遺症である白血病にかかり、入院を余儀なくされました。少女は見舞い客の一人から鶴を千羽折ると病気が治ると聞き、それ以来、薬の包み紙や見舞い品の包装紙で鶴を折り続けました。が、千羽折っても少女の病気は回復しませんでした。少女はそれでも鶴を折り続けて、とうとう死んでしまったのです。

戦争の悲惨さに負けまいとする少女の願いや、平和への願いに感動した多くの子供たちから折り鶴の少女の像を作ろうということになり、募金活動でこの折り鶴を持つ少女の像が造られたということです。

佐々木貞子ちゃんの原爆のない世界平和への願いは童話や絵本や歌曲や詩となり世界に伝えられています。しかし、日本では案外 貞子ちゃんの事を知らない人が多いのは残念です。唯一の被爆国である日本が、世界平和へのメッセージをもっともっと色々な形で発信して核兵器のない世界平和の到来が一日でも早く来ることを願わずにはおれません。

2004/05/06