禅のお話
過去の法話
あなたの居場所がありますか
京都府 神応寺住職 安達瑞光 老師
あなたの居場所がありますか「あなたの居場所がありますか」と尋ねられたら、どう答えますか。 自分をとりまく環境が激変することがあります、お金、仕事、健康、家族のこと、精神的な疲れなど、悩みや不安は尽きることがありません。悩みごとや不安で夜も眠れないことはだれでも経験することですが、ずっと続くと、自信喪失や無気力になり、歩むべき方向をも見失ってしまいます。
重苦しい世相にあって、人々に自信と希望を与えてくださった、ノーベル物理学賞を受賞の、ニュートリノ天文学の 東京大学名誉教授 小柴昌俊さん、そして ノーベル化学賞を受賞の、タンパク質解析技術の 島津製作所エンジニアの田中耕一さん、ともに長い研究の過程では、 試行錯誤され、苦労と悩みを乗り越えたところに、真実をつきとめられた発見がありました。
「随処に主となる」という言葉があります、一つのことに心をこめる、なりきる自分の置かれた立場、その場その場を精一杯にやれば、何処にあってもそこに生き甲斐を感じるなにかがあるはずです。
「気にいらぬ風もあろうに柳かな」という句がありますが、ものごとを避けたり逃げたりすることなく、他に動揺することなく、何ごとにも執着することなく、自分のなすべき本分を感じとり、道を踏み外すことなく、常に 自己の仏心を目覚めさせて自由自在に生きることが、「随処に主となる」 ということでしょう。
一時的に平安を得ても、目の前の変化に翻弄されるようでは、 ほんとうの安らぎとはいえません、最適な居場所を持ち合わせて、動じないことです。
2004/04/14