過去の法話

持戒

滋賀県 安昌寺住職 小泉義和 老師

ご本山で修行中のことです。
ある時、目の前に「おかしの羊羹」一本が出されました。
甘い羊羹、薄い一切れは、美味しいお菓子です。ところが修行僧に見せますと、なんと一本分を食べてしまいます。お腹がすいてすいて、何でも欲しいとき。何とも情けないなあ。

しかし、身体は正直に、良く出来たものです。
心臓の心拍数は早くなり、血糖値は上がり、指先はピリピリ、足指もピリピリしびれてきます。
食べた後、胸やけがして気持ち悪い。「いやだ、何とかしてくれいぃ」と、何とも情けないなぁ。

欲しい欲しいと望んでいても、次から次へ現れる欲とは、人をいつまでも満足させないのです。次から次に現れます。
でも身体に正直に、足る事を知ります。私はこの時に思いました。
「なるほど人間は、心の思いと体の機能は別なのだ」と、言う事を。

持戒という教えがあります。
生活を整えて、決まり事を守る事、慎む事です。
私たちは実にもろく、弱くて、はかない存在です。
だからこそ、今日の日を、慎み正しく今を大切に生きていかなければならないのです。
私たちは食事の時。数多くの命に、供養をして、自分はその供養を受けるに足るだけの、正しい行いをしているかどうか、慎みいただいているか。

反省して自分自身に問い掛けてみてはどうでしょうか。

2003/09/09