禅のお話
過去の法話
自然に守られて
NHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」の一場面です。
大台ヶ原を望む熊野の山奥に「木葉」という精進料理の店を構えます。
土の香りのする野菜、自然に生息する食材を生かし、山から流れ出る清らかな水を使ってほんまもんの味をだそうと料理人を演じているのは、池脇千鶴さんです。
渓流のせせらぎの音を聞きながら食べる精進料理は、心をいやしてくれます。笑顔を浮かべ、「ありがとうございました」と手を合わせ帰って行くお客さんの姿を見て、木葉は満足げな笑みを浮かべます。
箸とらば 天地自然の 恩を知れ われ一力で 食うと思うな
という句がありますが、使い捨ての生活に慣れてきっている私達は、大自然に「感謝する心」を失ってきています。
激しい競争社会にどっぷりと浸かっていて、自然に目を向けることを忘れているのではないでしょうか。
雨の音や風の音に耳をすませば、音が語りかけてきます。
目も同じです。
道端の一輪の花に感動する人、しない人とでは、自然に対する思いやりが違ってきます。
環境破壊が叫ばれているにもかかわらず、ペットボトルや空き缶、生ゴミが山道に捨てられています。私達は、自然環境を見直し一歩下がって考えなくてはなりません。
道元禅師さまは、『正法眼蔵・現成公案』の巻で、
鳥がもし空からはみ出したらたちまち死に、魚がもし水から出たらたちまち死にます。魚にとっては水はいのち、鳥にとっては空はいのちです。
と説いておられますが、空気や水、太陽は、動物や植物が生きていくためのいのちです。人間が生きていくためにも、自然とともに生きる環境が必要です。
あらゆる地球上の生物は海があることによって生まれたことは、誰もが知っています。
海があるから水があり、塩があるのです。
水と塩なしでは生物が生きていけないこともまた、誰もが知っていることです。
それなのに、なぜ、環境破壊が進むのでしょう。
箸とらば 天地自然の 恩を知れ
われ一力で 食うと思うな
便利で快適な生活を見直し、大自然に守られて生きているという「感謝の心」を取り戻したいものです。