禅のお話
過去の法話
同じ立場で生き合う姿
白露の 己がすがたをそのままに
紅葉に置けばくれないの色
もとより透明な色の無い一滴の白露であります。綺麗な紅いの紅葉の葉っぱの上にあれば自ずからルビーの輝きを見せます。それが、みずみずしい緑の葉っぱに止まれば翡翠の様に青く見えましょう。
「四摂法」と言う仏教の教えの第四番目が「同事」の教えです。
道元禅師は「同事といふは不違なり」とお教えになられました。
「不違」とは、「ちがわない」と言う事です。何が何にどう違わないのでしょうか?人と人とが互いに向かい合う時、「相手の立場になってという事です。相手の立場になって話合いましょう、考え合いましょう、これが教えられるところの「同事」であります。
私たちはいつも先ず自分を中心にして物事を考えがちです。つい「自我」が出てしまいます。それを相手に合わせて、同じ立場になって、と、言う事になればなかなか出来にくい事です。
それをそれぞれ個性の異なる一人一人の相手と同じ立場になるとなれば必要なのは「やわらかい心」です。
「やわらかい心」とはこの場合、柔軟心といいまして、個性の異なる如何なる相手にも、自分のほうから合わせていく事の出来る自分の心持ちであります。福祉の時代と称される現代に最も必要な心です。
子供に対しては自分が子供になって、女性の場合にも、まして老人に対してはなおの事ですね。
端的に言って「同事の心」とは自分の心を相手に行きつかせる事、すなわ相手が自分の心をうけとって納得して頂く事であります。
そこに大切な事は、先ず自分が自分にくいちがいが無いようにということです。貴方は如何ですか?昨日の自分と今日の自分に違いはありませんか。
先ず「確立した自分」であって初めて「同事」が現成するのです。
これを道元禅師さまは
「他をして自に同ぜしめて 後に自をして他に同ぜしむる」
とお示しになられました。
これを「和光同塵の心」と教えられます。