過去の法話

布施の行願

奈良県 宝泉寺住職 北野哲由 老師

互いに縁があって、同じ時代に生活しあう者として、今この時一番大切なのは「互いに助け合う」ということです。 道元禅師様はこれを「四摂法(ししょうぼう)」 《12/10法話「混迷の世に必要なこと」参照》と称して四つの智慧の実践項目としてお示しになりました。 第一が「布施」であります。端的に言って「施しをしあう」ことです。布施とは「貪らない」事とお示しです。「無茶に欲しない」とも言います。 

取る掴む 惜しい欲しいの世の中で
無茶に求めぬ心ほしけれ

握ることしか考えないで放つことを考えましょう。
例えば水に浮かんだ綺麗な葉っぱを拾おうとします。水を手前に寄せようとしたのでは却って葉っぱは向こうにいってしまいます。逆に水を向こうへ返したほうが葉っぱがこちらへ浮いてきます。
仏教で教えられる「布施」とはギブアンドテイクが互いに、貴方の布施を頂いてありがとう。私の布施を受けてくださってありがとうと喜ぶ。ここに「布施」の本来の姿があります。
「与えよう 物でも心でも」
これが布施のテーマです。ですから布施するのはお金や物ばかりではありません。
ここに無財の七施ということが説かれています。

(第一)言葉の布施 四つの智慧の実践項目にも愛語という項目があるように優しい言葉は優しい心のあらわれです。言葉は心の花であるといわれます。

(第二)笑顔の布施 「人の顔は、その人の人生生活のあらわれ」といいます。いかがでしょうか?優しい顔に接する時、心の安らぎを感じるといわれます。

(第三)眼差しの布施 目は心の窓であるといいます。眼差しが智慧の光に輝く時「目は口ほどにものを言い」で、眼差し一つで立派な布施行ができるものです。

(第四)身体の布施 阪神大震災の時、真っ先にボランティア活動をされた多くの皆さんのお姿は目覚しいものがありました。それは将に「身体のお布施」そのものであったことでしょう。

(第五)心の布施 文字通り「心に思う」その事だけでお布施となるのです。「随喜の功徳」という言葉があります。他の人が立派な布施行をする、そのことに対して心から喜ぶ事は当の本人よりも功徳があるとされます。

(第六)席を譲りましょう「優先座席」が設けられています。お年寄りや身体の不自由な人に席を譲りましょう。その座席が優先座席でなくとも自然にお譲りせねばおれない心の優しさを持ちたいものです。

(第七)房舎施(ぼうしゃせ) 例えば雨の日に雨宿りをして頂くのも布施の一つです。

いつでも何処でも誰にでもできる布施行です。
貴方は何からはじめますか。

2003/01/07