禅〜凛と生きる〜|曹洞宗近畿管区教化センター

禅のお話

今月の法話

食事作法

京都府 最福寺 住職 金森英明 老師

私たちは物心ついて自分で食事が出来るようになると、合掌して「いただきます」「ごちそうさま」と言う作法を親から教わりました。 家族揃って「いただきます」「ごちそうさま」。実にすがすがしい光景では有りませんか。身も心も平穏の証のように思われます。これぞ、日本文化の象徴であり誇れる姿だと思います。

私たちの宗派では、僧堂はもちろんのこと、一般の寺院においても皆で食事をいただく時には「五観の偈」という五つの心得、食事訓を唱えてから頂きます。

一般家庭においてもひと昔前までは、食事の前と後には家族が合掌して感謝の気持ちを表したものですが、近年こうした事が少なくなってしまった様に思われます。
お父さんは朝早く出勤の為朝食も早く、又帰りが遅いので、夕食も共に出来ない。
お母さんも働いているので、朝は慌しい。
子供は塾通いで全員が揃って食事をするのが難しくなったという事もありましょう。

外国人交換留学生の親子を受け入れるボランテイアをしている友人に聞いた話ですが、或るアメリカ人の親御さんを受け入れた時、全く日本語は話せないのに、日本に行けば、食事の前には合掌して「いただきます」、食事の後には「ごちそうさま」と言わなければならないと教わって、片言の日本語でそれを実行されたそうです。
その友人は彼らの仕草に驚かされ、自分を反省したと苦笑いしていました。日本の家庭を訪問する為の準備で日本文化として、事前に教育されたそうです。

外国からみれば、日本人は全てこの様に食事に対する心構えを持っていると認知されているのです。
生活環境や家庭の形態が変化したとはいえ、私達は先祖から引き継がれてきたこの良い習慣を子々孫々へと受け継いでいきたいものです。

道元禅師は「おおよそ 仏法の功徳は 刹那よりするものなり」と示されていますが、「いただきます」「ごちそうさま」というこのわずかな礼儀作法の中に無量の教えがあるのです。
食事への感謝を表す作法こそ大事なのです 。

2013/05/30
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