禅のお話
今月の法話
流れに従って志は変わらず
アメリカのクリントン前大統領は、座右の銘として「流れに従って、志は変わらず」という禅の教えの言葉を大統領になる前から14年間も大切にして、とうとう大統領の座についてのだそうです。
大統領となって、日本を訪問した時も心の支えとしてずっと座右の銘としていることを、誇らしげに話したということでであります。
私たちの毎日を見てみますと、「流れに流されて、志ここにあらず」というような、情けない状態ではないでしょうか。
あるアンケートに70歳以上の方は、国を思い、60歳代の方は親戚やご近所を思い、40歳代から50歳代の方は同僚や家族のことを思い、30歳代の方は自分のことだけを考え、20歳代以下の人はその場の事だけを考えているという結果を聞いたたこがあります。
また、外国の企業の方からは「日本人はまじめで優秀な能力があり、こつこつと積み上げた高い技術があるのに、どうしたいのかという信念が見られない」と批評した人がいます。
今、日本人全体が方向性を見出せないで困っています。
フランスへ仕事で転勤した人がいます。
一緒に仕事をするパートナーを紹介された時、パートナーが「君は信用できるのか」との質問をしてきたというのです。
彼にとって、初めての問いに即座に答えられなかったといいます。
もじもじしているそんな彼に相手の人は助け舟を出して、「僕は カソリックの信者だ」と言ったので彼も負けずに「僕は 禅セクトの仏教徒だ」というと、相手の人は「オッケー、一緒にがんばろう」といって笑顔で迎えてくれてと私に話してくれました。
クリントンの座右の銘である「流れに従って志は変わらず」という教えは「流れ」とは時、場所、環境であり「志」はその人の人生観そのものであろうと思います。
修証義第5章「行持報恩」の最後に、
「謂ゆる諸仏とは釈迦牟尼佛なり、釈迦牟尼佛これ即心是佛なり。過去、現在、未来の諸仏、共に仏となる時は必ず釈迦牟尼佛と成るなり。是れ即心是佛なり。即心是佛というは誰というぞと審細に参究すべし」
とお示しであります。
仏教徒にとって、お釈迦様と同じ心をもって、或いは願い、或いは行い、或いは見てみることが大切ではないでしょうか。
私たちはそんな尊い深い願いを持って日々を遅らせていただきたいものです。