禅のお話
今月の法話
諸悪莫作(しょあくまくさ)
「諸々の悪い行いをなすことなく、衆々の善き行いをなし、自らのこころを浄めること、これが諸仏の教えである」
と、このように説かれた、七仏通戒(しちぶつつうかい)の偈という教えがあります。
人はどのようにして生きていけばよいのかと問われれば、ためらうことなく、
「悪いことをしてはいけない、善いことをしなさい。そして自分の心を浄めなさい。これが諸仏の教えである」
こう答えたくなります。簡単明瞭でありまして、誰も異存はないでしょう。
しかしそれを実践するとなると、これは何とまた難しいことでしょうか。
この教えを実践するということは、自らが日々心して努力し、修行の力によって自分を変えることです。日常修行の積み重ねによって、自分自身に修行の力が現れて、さらにすばらしい力がでるようになりますと、 「悪いことをしようと思うも、できない、良いことをせずにはおれれない、そのような生き方の中で自然とこころが浄まっていきます。」
仏教とは、人の日常の生き方そのものです。
ある日、白楽天が道林禅師に、「仏の教えとはどういうものでしょうか」とたずねました。
道林は「悪いことをしてはいけない、善いことをしなさい、そして自分の心を浄めなさい、これが仏の教えである」と答えました。
白楽天は「そんなことなら、3歳の童子でもそう言うでしょう」と言うと、
道林禅師は「たとえ3歳の童子が言い得ても、80歳の老翁でも実践することは難しい」と答えました。
このように、道元禅師は唐の白楽天と道林禅師との問答を引いて、人の生き方を説き著された「正法眼蔵の諸悪莫作」の巻きのむすびとしておられます。