禅〜凛と生きる〜|曹洞宗近畿管区教化センター

禅のお話

今月の法話

食のこころ

兵庫県 長楽寺住職 安達瑞光 老師

朝の連続テレビ小説「ほんまもん」(NHK)が人気を博しています。
食いだおれの大阪で、本物の料理人になりたい木葉の役を、ヒロイン池脇千鶴さんが、元気いっぱい演じておられます。茶の間にその息ずかいが伝わってきて、とても楽しい番組です。

770年ほど前に、道元禅師は「典座教訓」という教えを著して修行僧の食事をつくる典座(てんぞ)の任務と心得をとかれました。
たとえば粗末な菜っ葉を用いてお汁やおかずをつくるとしても、いいかげんに扱う心をもって調理してはいけない。上等な食材だからといって浮かれたりする心を起こしてはならない。まごころと清らかな心で同じように調理しなければいけない。また、食べる人によって、態度や言葉を変えるのもよくない。食材や器物はすべて自分の目の玉のように大切に取扱い、生き生きとした眼を見開いて、精魂こめて典座の職を勤めよと教えられました。

現代の日本では大量の食物が捨てられています。
食べ物が巷にあふれています。
美食、飽食の世の中だと言われますが、飽食、偏食は肥満や病気につながります。健康のためにも節食を心掛けましょう。

私たちは生きるために「もの」を食べます。
「もの」はすべて仏のいのちです。仏のいのちである「もの」を食べて、自分という仏のいのちを生かしてもらっています。
生き生きとした眼を見開いて、食材の命を輝かすように、調理したいものです。

食の心とは、一椀のあたたかさを調理し、一椀のあたたかさを味わい知るということでしょう。
戦火の下で、何もかも失ってしまったアフガニスタンの人々に、一椀のあたたかさを贈りたいものです。

2002/12/03
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